podcasting Podcasting

ポッドキャストの市場動向。世界中で注目を集める音声コンテンツの今と未来

smnl-podcasting-market

世界中で右肩上がりの音声コンテンツ市場

世界の音声コンテンツ市場は右肩上がりを続けています。その背景には、AIスピーカーやワイヤレスイヤホンの普及、そしてIoTの発展により「ながら聴き」しやすくなったこと。また、新型コロナウイルスの影響でおうち時間が増えたことにより、手軽にどこでも利用できる音声コンテンツの強みが評価されていると考えられます。

音声コンテンツ市場を牽引するオーディオブック

音声コンテンツ市場の中でもポピュラーなオーディオブック市場は、新型コロナウイルス感染拡大による需要増もあり、40億ドル規模の市場に達するとの予測がされています。現在は米国と中国の売り上げが特に伸びていますが、他の地域もこれからの伸びが予想され、市場全体の拡大が期待されます。

世界中で利用者数が拡大しているポッドキャスト

ポッドキャスト市場は現在10億ドル規模ですが、2025年までには3倍近く成長すると期待されています。また、企業によるポッドキャストも増えつつあります。Fortune 500(フォーチュン誌が選ぶ収益上位500社)の上位25社のうち、17社(68%)が自社のWebサイトでポッドキャストを配信しています。

音楽配信サービスSpotifyによる大型買収

Spotify(スポティファイ)がアメリカの大手ポッドキャスト制作会社2社(Gimlet MediaとAnchor)を買収したことも注目です。SpotifyのCEOは、「ポッドキャストに注力することで、将来的にSpotifyの20%程度は音楽以外のコンテンツとなるだろう」と語っています。この流れも世界的な音声コンテンツ市場拡大を後押しする可能性があります。

続々と台頭する新勢力「Luminary」「Himalaya」

新たなサービスも続々と勢力を拡大しています。ポッドキャストのサブスクリプションサービスを展開する「Luminary(ルミナリー)」は、「ポッドキャストのNetflixになる」を掲げ、1億ドルの資金調達を行ったと報道されました。また、中国で4億人以上が利用する音声プラットフォームの最大手Ximalaya(シマラヤ)が日米に進出し「Himalaya(ヒマヤラ)」を展開するなど、話題に事欠きません。

なぜ、いま音声が見直されているのか?

現在、動画・写真・テキストコンテンツはとても充実しています。しかし、どのコンテンツも視覚情報に重きを置いたコンテンツばかりです。一方で、音声コンテンツはその新鮮さと使いやすさから利用者数が伸びています。

視聴者は「情報量が多いと疲れてしまう」

動画・写真・テキストなど、視覚からの情報に依存しているコンテンツは情報量が膨大なため、楽しむのにエネルギーを要します。本や映画を楽しむには、まとまった時間を確保し、コンテンツのストーリーラインや情報量についていけるよう、集中して向き合う必要があります。

しかし、忙しい現代人にとっては、時間の確保も大変です。エンターテイメントとして楽しみたいのに、動画やテキストコンテンツだと逆に疲れてしまうという方も多いです。

発信者・配信者は「声でリアルな熱量を伝えられる」

発信者・配信者側のやり辛さもあります。テキストがメインのコンテンツの場合、自身が発信したい情報を整理しながら好きなだけ発信できるというメリットがある一方で、他の媒体と比較すると読者の反応・コメントが返ってくるまでに時間がかかる、または反応が薄い、といったデメリットがあります。また、文字だけのコンテンツのため、発信者の熱量が伝わりづらく、誤解されてしまうリスクもあります。

YouTubeなどの動画コンテンツの場合、配信者の参入コストが高いという難点があります。カメラなどの機材、照明、編集技術が必要なので、挑戦してみたくてもハードルが高くて諦めてしまう、という方も多いです。また、動画配信者として視聴者を巻き込むために必要なハイテンションな演出に対して、苦手意識を持ってしまう方も少なくありません。

音声が活躍する文脈とは?

視聴者はカジュアルに省エネで楽しめる

音声コンテンツの場合、視聴者は動画・テキストコンテンツよりも気軽に楽しむことができます。イヤホンを利用すれば、通勤の時間、ランニングの時間、家事や料理の最中など、手は塞がっているけれども耳は空いている、という時にながら視聴ができます。

短時間でも耳だけで楽しめるので、スキマ時間にも利用できます。カジュアルに省エネで楽しめるのに、しっかり必要な情報は取り入れられるところがうれしいポイントです。また、動画広告やSNS投稿など、視覚的な情報に引っ張られることがないので、リラックスしてコンテンツを楽しむことができます。

発信者・配信者に嬉しい制作コストの低さ

配信者にとっても、音声メディアは自由度の高いコンテンツです。番組内容に規制がないので、自分の話したいトピックを選ぶことができます。音声メディアの場合、ユーザーが主体的に興味のある分野の視聴を行うことから、比較的ニッチな話題でも制限なくコンテンツの作成ができ、コアなファンから支持される傾向にあります。視聴者からの反応も素早く返ってくるので、相手に伝わっていることを感じながら話ができる点もモチベーションに繋がります。

また、他のメディアと比べて制作コストが低いことも魅力の一つです。撮影機材などは必要なく、スマホ一台あればコンテンツ作成・配信が可能です。編集技術などに関して知識がなくても気軽に始めることができます。そして、発信者の見た目を気にする必要がないので、コンテンツ作成前の事前準備が省略でき、結果としてコンテンツ作成を続けやすい土台ができています。

日本の音声市場は7500億円規模のブルーオーシャン

アメリカをはじめとして海外では爆発的に人気の音声コンテンツですが、国内の音声コンテンツ市場規模は7500億円ほどで、全体のコンテンツ市場の約6%にとどまっています。そして、そのうちインターネット発のコンテンツは約1%しかありません。

いったいどのようなものが利用されているのか、例として現在国内で展開されている音声コンテンツ関連のサービスを紹介します。

無料で聴けるラジオアプリ「radiko」

ラジオと聞くと、古いメディアのイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし現在、新型コロナウイルスの影響もあり、その価値が大きく見直されています。国内ネットラジオ最大手「radiko(ラジコ)」の月間利用者数は、コロナ禍における外出自粛の呼びかけが始まった2020年3月を境に急激に増加し、現在でも月間利用者数は1000万人に迫る勢いです。「radiko」側もそれに合わせてコンテンツを増やしていて、2020年には民放ラジオ局を全てカバーし、更に勢いを増しています。

朗読を聴く「Audible」「audiobook.jp」

音声コンテンツの中でも人気が高いのがオーディオブックのサービスです。本の内容をナレーターが読み上げてくれるサービスで、読書はしたいけれどじっくり腰を据えて本を読む時間が取れない、という忙しい現代人のライフスタイルでも本のインプットを可能にしてくれます。

Amazonが運営するオーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」は、業界でも大手です。「Audible」の最大の魅力は、その豊富なラインナップにあります。洋書のラインナップは40万冊以上とかなり幅広く、日本語の書籍も1万冊を超えています。最近では英語の勉強のために洋書のオーディオブックを購入する層も増えているそうです。

オーディオブック老舗の「audiobook.jp(オーディオブック)」は、サブスクリプションサービスが魅力です。1万冊以上が聴き放題の対象となっており、とにかくたくさん聴きたい方に愛用されています。

人気番組が集まる音声配信メディア「Voicy」

様々な分野の専門家や、プロフェッショナル、音楽家や著名人など、人気と実力のあるパーソナリティによるコンテンツを聴くことができる音声メディア「Voicy(ボイシー)」も、人気が拡大しています。著名人の配信者が多いことから、リスナーはそのファン層や20~30代の若者が中心です。

また、「Voicy」では、今後はあらゆるサービスが音声で操作をするVUI(ボイス・ユーザー・インターフェイス)と繋がるというビジョンを持っており、様々なデバイス・IoT機器に音声を配信する音声インフラ事業の開発事業も行なっています。

他にも、「Radiotalk」「Spoon」「Stand.FM」、大手YouTuber事務所が開発した「Rec.」など、多数のサービスが広がりを見せています。

可能性が広がるポッドキャスト

特定のサービス内ではなく、様々なプラットフォームで配信することができるのがポッドキャストです。iPhoneの「Podcast」アプリやAndroidの「Google Podcasts」だけでなく、「Spotify」「Castbox(キャストボックス)」「Stitcher(ステッチャー)」といったプラットフォームのほか、オウンドメディアでの配信など選択肢は無数にあります。

最近では、ラジオをポッドキャストのアプリを通して視聴ができるサービスも開始されています。「SPINEAR(スピナー)」は世界中の音声ドラマ、ドキュメンタリー、コメディ、ニュース、オリジナルコンテンツを配信しています。

大手メディアであるTBSも、TBSラジオの一部を「ラジオクラウド」というポッドキャストアプリを通して視聴できるサービスを始めました。いつでも好きな時にサービスの一部を利用してもらい、新たな聴取者を取り込むことを目的としています。

このように、既存のメディアと相性良く共存できるのが音声メディアの利点です。

動き始めた国内の音声広告市場

音声コンテンツ市場拡大の鍵を握る存在として、音声広告(オーディオアド)があります。2019年時点で国内のデジタル音声広告の市場規模は7億円ですが、2020年には前年比220%超で成長し、その後2025年には420億円に達するとの予測が出ています。

ベンチャー企業のオトナルは、「Spotify」「radiko」「朝日新聞アルキキ」で広告出稿から効果測定までを一気通貫で行うサービスを開始しました。ターゲティングしやすくスキップされにくいという強みを持つ音声広告ですが、その効果が実証されればより多くの企業が出稿を検討するでしょう。

今後日本の音声コンテンツ市場はどう変化するのか

現状日本でのコンテンツ市場では、動画コンテンツが一番ポピュラーです。しかし、新型コロナウイルスの影響で動画コンテンツが作りづらくなり、また利用者にとっても、ライフスタイルに合わず疲れてしまうなど、逆の動画コンテンツの難しさや限界も見えてきました。

グローバル市場では早くも音声コンテンツの利用が増えていますが、日本でも改めて音声コンテンツの価値が見直されるのではないでしょうか。情報量が多すぎずに限定されている点も、マルチユースできる点も、ユーザーにとっては消化しやすくカジュアルに利用できるので大きなメリットです。

現在では既存の音声コンテンツであるラジオや著名人の配信、一般個人の配信の増加傾向が見られる音声コンテンツ市場ですが、今後は消費者とダイレクトにコミュニケーションを測るためのプラットフォームとして、企業組織の発信が注目を集めています。

課題だったマネタイズについても、選択肢が増えてきました。いわゆる投げ銭が可能なアプリの利用や、クラウドファンディングサービスを通じた寄付、「note(ノート)」のような他メディアとの併用など、ただ番組を購入するだけではない「支援」という形でマネタイズする方法が多いのが特徴です。

マーケティングやブランディング効果への期待が高まる中、音声コンテンツの利用は今後もますます拡大することが予想されます。それと同時に、制作やマーケティングをサポートするサービスの存在も、参入者のハードルを下げることが期待されます。

令和は音声コンテンツ元年になり得るのか? 音声業界の動向に要注目です。

Related

関連する記事

レコーディングと編集の
基礎知識

カテゴリから記事を探す

New

最新の記事

Recommend

おすすめ記事