podcasting Column

Netflixが採用特化のポッドキャスト番組「WeAreNetflix Podcast」に注力する理由

2020.04.24

世界最大級のオンライン動画ストリーミングサービスを提供するNetflix。世界190か国で有料会員数は1億6700万人を突破し、2018年には「技術者が働きたい企業ランキング」で、Googleを抑えてNo.1に。急成長を続けるNeflixは、採用広報にも力を入れています。

今回ご紹介するのは、Netflixが展開する幾多の採用力強化施策の中でも重要視されている、Podcastが果たす役割について。映像のプロ集団であるNetflixが、音声に限定されたPodcastをどう活用しているのか、またその理由に迫ります。

マルチチャネルで展開する採用コミュニケーション戦略

“We Are Netflix”というスローガンのもと、採用ブランディングをグローバルに展開するNetflix。

採用サイト「Netflix Jobs」を中心に、LinkedIn、Facebook、Instagram、Twittterと複数の採用チャネルを持ち、各プラットフォームの特徴に適した採用コンテンツをマルチに出し分ける形で情報を発信しています。

例えば、ビジュアル要素の強いInstagram(@WeAreNetflix)では、社員がピザをテイスティングする楽しい動画で社風を伝える。一方、Twitter(@WeAreNetflix)では、ニュース性の高い求人情報の発信や、時に求職者の質問に直接答えることで、幅広くエンゲージメントを獲得する。

このように、チャネル毎に異なる強みやターゲットの属性に合わせて発信する情報を変えることで、総合的なブランディングを叶え、採用候補者とのマッチングにつなげています。

動画・テキスト・音声、3つのメディアの使い分け

チャネルのほか、採用サイトNetflix Jobs内でも、精緻な情報設計がされています。特に2018年から始まったサイト内コンテンツWE ARE NETFLIXでは、Netflixのカルチャーや、働くメンバー、仕事内容について独自の方法で情報発信されています。

注目すべきは、動画・テキスト・音声の3つのメディアを軸にした情報の出し分け。今回は、それぞれのメディアの役割の違いを分析します。

Netflix JOBS

採用サイト「Netflix Joobs」の現行サイト(2020年2月時点)

動画 × 抽象度の高い理念・ビジョン

Netflixでは、2018年から採用に特化したYouTubeでの動画配信を展開しています。経営層や社員のインタビュー動画を中心にまとめられており、経営理念やビジョンなどの抽象度の高いテーマや、Netflixのワークカルチャーを、洗練された映像で伝えています。

1本2〜5分ほどの短い時間で、採用候補者にNetflixの全体像を伝えるのに最適な手段です。

テキスト × 社員一人ひとりの働き方

最も情報の網羅性が高く、ベーシックなテキストコンテンツ。採用サイト内では、Netflixのカルチャーや理念が書かれた個別ページに加え、2018年からは社員ブログLife at Netflix Blogも始めています。

「Life at Netflix Blog」では、世界中の社員が自身の仕事や働き方について自分を主語にして書くことで、社員一人ひとりの考えやワークスタイルを発信しています。

音声 × 仕事内容にフォーカスした情報

2018年からスタートした採用に特化したpodcast番組WeAreNetflix Podcast。さまざまな部署のディレクターやマネージャーが、経験を交えながら事業内容や仕事の詳細を語る番組内容で、1エピソードあたり30分〜1時間かけてたっぷりと語られます。

「We are Netflix」のおすすめエピソード3選

「We are Netflix」の人気エピソードの中から、特に聞いてほしいエピソードを3つご紹介しましょう。

01.『Netflixの機械学習モデルを支えるエンジニアのマネジメント』

Netflixのレコメンド機能に、ちょうど見たいと思っていたものが出てきたことはありませんか?

機械学習によりAIのデータ取得が進化していく中、正確性を担保するアルゴリズム構築や、機械学習のモデルを選択するエンジニアの質を確保しなければなりません。時には質を担保できないエンジニアをしっかり解雇する。技術の話よりもメンバーが「何をしたいのか」を明確にすることでマネージャーとエンジニア間のコミュニケーションを円滑にします。

業界最先端のエンジニア一人ひとりをエンパワーする組織マネジメントのが聞けるエピソードです。

『Netflixの機械学習モデルを支えるエンジニアのマネジメント』

02.『Netflix Animationのトップが語る、日本アニメーションの功罪』

Netflix Animationにスポットをあてた特別エピソード。キャラクターアニメーションのヘッドであるJames BaxterとNetflixアニメーションスタジオのクリエイティブディレクターであるPhil Ryndaが、日本のアニメーションについてフィーチャーします。

世界中にファンを持つ日本アニメは、海賊版サイトの横行など様々な障壁を乗り越えて質の高い作品が生まれ続けています。 日本のアニメに対する世界ファンの広がり、万人に受け入れられるための努力をNetflix Animaitionのトップが語ります。

『Netflix Animationのトップが語る、日本アニメーションの功罪』

03.『最高の視聴体験を届けるNetflixの組織運営』

NETFLIXのクリエイティブプロダクション部門は、字幕、タグ付け、予告編、画像などあらゆるメディアを通して、視聴者に最高の視聴体験を担保しています。

このチームを率いていくにあたって決断の数をできるだけ少なくするというリーダー論、クリエイティブの力でNETFLIXからSportifyに流れていったユーザーを復帰させた方法、また、世界規模になるにつれて彼らがチームのメンバーに求めるスキルとは。

クリエイティブプロダクション副社長の、ロシェル・キング氏がお届けしています。

『最高の視聴体験を届けるNetflixの組織運営』

NetflixがPodcastに注力する、5つの理由

Netflixが独自の取り組みとして2018年から力を入れているPodcast。一般的にPodcastが採用に活用されることはまだ珍しい中、なぜPodcastに注力しているのでしょうか。

理由1.時間の制約が少ないから、より深い情報が届く

2〜3分の短時間で確認できるブログや動画は、会社の全体像を把握するには最適です。ただ、コンパクトにまとまっている分、伝わる内容も表面的になってしまいがちです。

その点、1エピソードあたり30分以上かけて社員が仕事をじっくりと語るPodcastは、より細かく深い仕事の情報を伝えることができます。

理由2.動画よりも制作ハードルが低い

Podcastの制作コストは、映像コンテンツの数十分の一。また、動画と違って社員が顔を出す必要がないため、出演する社員たちの心理的負担も少なくなります。

さらに、音声データは動画のデータよりも軽いため、視聴環境にやさしい点もメリットのひとつです。

理由3.ジョブ・ディスクリプションとの好相性

テキストだと無機質な情報になりがちなジョブ・ディスクリプションも、Podcastで社員が仕事内容を語ることで、全く違う印象になります。例えば、「事業に共感してくれる社員」を募集しても、従業員の熱い想いはテキストでは伝わりにくく、共感も呼びにくいものです。

ジョブ・ディスクリプションを、社員自身の経験を交え、音声で伝えることで、社員への共感が生まれ、必要なスキル等の情報も明確に伝わります。

理由4.入社後のミスマッチを減らす

社員の働き方について、実際のチームメンバーが具体的に実例を交えて語ることで、チームの雰囲気から、どのポジションにどのようなキャラクターの人材を求めているかまで、詳細な情報が伝えられます。

社員の生の声でリアルな情報を発信することで、入社後のミスマッチを解消し、離職率を下げる効果も期待できます。

理由5.面接の精度を上げる

「WeAreNetflix Podcast」を視聴し、すでに職務を理解している採用候補者には、面接でのブリーフィングを簡略化することできます。

代わりに面接では職務について話す時間が増えるので、求職者からでる質問も具体的になり、会話の質が上がります。

また、Podcastで社員のパーソナリティや社内の雰囲気まで掴んでいる候補者とは、距離も縮まりやすく、リラックスした雰囲気の中でより良い面接をすることができるでしょう。

ハイパフォーマーからの「共感」を呼ぶ、Netflix的採用アプローチ

2009年に、Netflixの企業文化や社員の行動規範を定めたカルチャーガイドが公開されました。全てのポジションでハイパフォーマーを起用することにこだわり抜く姿勢が貫かれたそのガイドは、FacebookのCOOのシェリル・サンドバーグから「シリコンバレーから生まれた最高の文書」と評された程です。

その上で、Netflixが従業員や求職者に求めているのは、「スキルより企業文化に馴染めるか」ということ。そのため「Netflix Jobs」のコンテンツは、Netflixの企業文化やメンバー、自分たちの仕事がもたらすインパクトについてストーリー化され、採用候補者にとって魅力的な形で届けられています。Podcastの活用はもちろん、各チャネルの特徴を捉えた巧みな採用戦略は、多くの企業にとって見習えるアプローチと言えるかもしれません。

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