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なぜ彼らは「独占配信」を選ばないのか iHeartMediaのオープン戦略に学ぶポッドキャスト成長論

2025.10.23

smnl-iheartmedia-podcast-open-strategy ポッドキャストクリエイターの多くが、自身の番組をいかにして成長させ、リスナーを増やし収益につなげていくかという課題に直面しているのではないでしょうか。そんな中、世界No.1のポッドキャスト配信事業者であるiHeartMedia社が先日開催された「IAB Podcast Upfront」で示した戦略が、日本のクリエイターにとって大きなヒントとなりそうです(出典: https://www.podcastnewsdaily.com/

彼らはなぜ、Spotifyのような独占配信戦略ではなく、あらゆるプラットフォームにコンテンツを解放する「オープン戦略」を貫くのでしょうか。本記事では、その背景にある緻密な計算と、クリエイターが自身の番組を成長させるための具体的なヒントを徹底的に分析・解説します。

1. 世界No.1企業iHeartMediaが示すポッドキャストの新たな潮流

iHeartMediaは、ポッドキャスト市場において世界最大のパブリッシャーであり、その動向は業界全体の未来を左右します。彼らが今回改めて強調したのが、特定のプラットフォームにリスナーを囲い込むのではなく、より多くの人々にコンテンツを届けることの重要性でした。

1-1. 独占配信はしない – 「オープンエコシステム」戦略の真意

iHeartMediaの戦略の根幹にあるのが、オープンエコシステムという考え方です。これは、Apple PodcastsやSpotify、YouTubeなど、リスナーがいる場所であればどこへでもコンテンツを届けるという思想です。

一部のプラットフォームが人気番組を独占してユーザーを自社サービスに囲い込もうとする動きとは一線を画します。iHeartMediaのCEO、コナル・バーン氏は、ポッドキャストの本質は「人間が物語を語る」という普遍的な行為であり、特定の壁に閉ざされるべきではないと考えています。このオープンなアプローチこそが、リスナー層を最大化し、クリエイターエコノミー全体を発展させる上で不可欠だという信念がうかがえます。

1-2. なぜ今、特定のコミュニティへのアプローチが重要なのか

幅広いリーチを重視する一方で、iHeartMediaが同時に力を入れているのが、特定の興味関心で結ばれたコミュニティへのアプローチです。彼らは、ただ漠然と多くの人に届けるのではなく、熱量の高いコミュニティに深くリーチすることこそが、リスナーとの強いエンゲージメントを生み出す鍵だと考えています。

これは、すべてのクリエイターにとって重要な視点です。リスナーは単なる数字ではありません。特定のテーマに情熱を注ぐ「ファン」の集まりです。彼らの心に響くコンテンツを届けることが、ポッドキャスト成功の第一歩となります。

2. リスナーを熱狂的なファンに変える3つの戦略

では、具体的にどのようにしてコミュニティを形成し、リスナーをファンへと育てていけばよいのでしょうか。iHeartMediaが注力する3つの分野から、そのヒントを探ります。

2-1. ニッチを極める – スポーツファンを惹きつけるリーグとの連携術

iHeartMediaは、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)やNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)といった巨大プロスポーツリーグと独占的なパートナーシップを結んでいます。これは、単に人気コンテンツを確保するというだけでなく、リーグが長年かけて築き上げてきた熱狂的なファンコミュニティに直接アクセスすることを意味します。

この事例から日本のクリエイターが学べるのは、既存のコミュニティと連携することの重要性です。例えば、特定の趣味や専門分野で既に活動している団体や影響力のある人物(インフルエンサー)と協力することで、彼らが持つ熱心なフォロワーに効率的にアプローチできる可能性があります。

2-2. 急成長オーディエンスを掴む – My Culturaネットワークの成功要因

iHeartMediaが次に注目するのが、ヒスパニック系オーディエンスです。同社が運営する専門ネットワーク「My Cultura」は、このセグメントに特化したコンテンツを配信し、過去5年でリスナー数を2倍以上に増やすという驚異的な成功を収めています。

成功の要因は、文化的な背景を深く理解し、当事者であるクリエイターが本物のコンテンツを届けている点にあります。ラティーノのリスナーは、同じ文化を持つホストが推奨する商品を信頼する傾向が強いというデータもあり、文化的な共感が強いエンゲージメントを生んでいます。これは、特定の属性を持つリスナー層に深く響くコンテンツ作りの好例と言えるでしょう。

2-3. Z世代の心を掴む「つながり」の醸成方法 – Emergency Intercomの事例

若い世代、特にZ世代にとって、ポッドキャストは単なる情報収集ツールではありません。iHeartMediaの調査では、84%がコミュニティとつながるために聴くと回答しています。

人気番組「Emergency Intercom」のホストは、リスナーとの間にまるで友人のような親密な関係を築き上げています。彼らは広告主に「私たちのオーディエンスは、個人的につながりを感じてくれている」と語ります。この信頼と共感に基づいた関係性こそが、Z世代の心を掴み、熱心なコミュニティを形成する上で最も重要な要素なのです。

3. 日本のクリエイターが今すぐ応用できるヒント

iHeartMediaの壮大な戦略を、日本の個人クリエイターはどのように自身の活動に活かせばよいのでしょうか。明日からでも実践できる2つの具体的なヒントを提案します。

3-1. 「信頼」を収益に変えるホストリード広告の可能性

収益化は、多くのクリエイターにとって重要な課題です。その有力な解決策となるのが、番組ホストが自らの言葉で商品やサービスを紹介するホストリード広告です。

前述の通り、リスナーとホストの間には強い信頼関係があります。iHeartMediaのデータによれば、リスナーの66%がホストに推奨された商品を検討・購入した経験があるといいます。この事実は、クリエイターが自身の信頼を直接収益に変えられる可能性を示唆しています。まずは小規模なタイアップからでも、自身の番組のテーマと親和性の高い商品やサービスを紹介してみてはいかがでしょうか。

3-2. 自身のポッドキャストでコミュニティを形成するための第一歩

熱狂的なファンコミュニティは、一朝一夕には作れません。しかし、その第一歩は今日から踏み出せます。まずは、リスナーからのメッセージやコメントに丁寧に返信することから始めてみてはいかがでしょうか。

SNSやコメント欄でリスナーと積極的に交流し、番組内でその声を紹介することで、リスナーは「自分もこの番組の一部だ」と感じるようになります。こうした双方向のコミュニケーションの積み重ねが、Z世代が求める「つながり」を生み出し、あなたのポッドキャストを唯一無二のコミュニティへと成長させてくれるはずです。

4. まとめ

iHeartMediaが示す「オープン戦略」と「コミュニティ重視」のアプローチは、日本のポッドキャストクリエイターにとって、番組を成長させるための羅針盤となり得ます。

プラットフォームの囲い込みに左右されず、あらゆる場所のリスナーにコンテンツを届ける。そして、特定のテーマや文化を共有する熱量の高いコミュニティを築き上げ、リスナーとの信頼関係を深めていく。この2つを両輪で進めることこそが、これからのクリエイターエコノミーを生き抜く鍵となるでしょう。この記事が、あなたのポッドキャスト活動の一助となれば幸いです。

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曽志崎 寛人
PROPO.FM Producer
曽志崎寛人
歴史ポッドキャスト「ラジレキ〜ラジオ歴史小話」 ナビゲーター