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こうした課題を解決するため、IAB Tech Labは2026年1月20日、新しい標準仕様であるEvent and Conversion API(ECAPI)を発表しました(出典: https://iabtechlab.com/standards/ecapi/)。本記事では、このECAPIがなぜ重要なのか、そして2026年に向けた企業の導入ロードマップについて詳しく解説します。
1. 広告計測の断片化が招く不正確なアトリビューションの限界
現在、多くの広告主はシグナルロスへの対策として、主要なプラットフォームが提供する独自のCAPI(サーバー経由のコンバージョン計測)を個別に導入しています。しかし、この個別対応が新たな問題を引き起こしています。
1-1. 主要プラットフォームが独自のCAPIを展開する弊害
Meta、Google、Amazon、TikTokといった各プラットフォームは、それぞれ独自の仕様でCAPIを提供しています。これらはデータの構造や認証方式、ユーザーの識別方法が異なるため、同じコンバージョンイベントであっても媒体ごとに報告される数値が食い違うといった事態が常態化しています。これにより、広告主はどの数値を信じて予算を配分すべきか判断が難しくなり、アトリビューション(広告の成果貢献度の割り振り)の精度が低下しています。
1-2. エンジニアリソースを圧迫する実装・保守コストの増大
プラットフォームごとに異なるAPI仕様に対応することは、企業のシステム担当者にとって大きな負担となります。各社のルールに合わせたデータ形式の変換や、アクセストークンの発行手順、重複排除のロジックを個別に構築・維持しなければなりません。この技術的な複雑さは、特にリソースが限られた企業にとって、最新のアドテクノロジーを活用する上での大きな障壁です。
2. ECAPI(Event and Conversion API)が解決する3つの課題
IAB Tech Labが提示したECAPIは、まさにこの実装の壁を打ち破るための統一規格です。
2-1. フルファネルイベントの標準定義による共通言語の確立
ECAPIは、マーケティングにおけるあらゆる段階のイベントを標準化します。認知から検討、そして最終的な購入完了まで、共通の定義を用いることで、広告主は一度イベントを定義すれば、ECAPIに対応したすべての広告パートナーへ同じ形式でデータを送信できるようになります。これにより、媒体間での成果の乖離を抑え、共通の指標でパフォーマンスを評価することが可能になります。
2-2. サーバー・トゥ・サーバー通信によるブラウザ依存からの脱却
ECAPIは、広告主のサーバーからパートナーのAPIへ直接データを転送する、サーバー間通信を前提としています。このプロセスはブラウザを介さないため、アドブロッカーやクッキー制限の影響を受けません。結果として、データの到達性を高めることができ、広告運用の最適化に必要な信号を安定してプラットフォームへ届けることが求められています。
2-3. 柔軟な拡張性とプラットフォーム間の相互運用性
ECAPIは単に画一化を目指すものではなく、各プラットフォーム独自のニーズにも対応できる柔軟性を備えています。共通の基盤を維持しながら、特定の業界向けパラメータなどを拡張フィールドとして定義できるため、将来的な技術変化や媒体ごとの特殊な要件にも、ゼロからAPIを作り直すことなく対応が可能です。
3. 2026年までの実装ロードマップ:今、マーケターが準備すべきこと
ECAPIの導入は単なる技術的な作業ではなく、組織的なデータ戦略の再構築に他なりません。2026年のクッキー完全廃止に向けて、以下のステップを検討すべきです。
3-1. 自社データの監査とイベントマッピングの再構築
まずは、自社のビジネスにとって真に価値のあるイベントは何かを再特定する必要があります。単なる購入完了だけでなく、AIが学習に必要とする中間指標を含め、ECAPIの仕様に合わせたマッピングを行います。同時に、送信するデータの正確性を検証し、個人情報のハッシュ化(匿名化処理)などのプロセスが法令に準拠しているかを確認するデータ監査も不可欠です。
3-2. IT部門やCDPベンダーとの連携によるインフラ整備
自社で直接APIを構築するのか、あるいはサーバーサイドのコンテナ技術やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を活用するのかを検討します。ECAPIという標準規格があれば、一度設定したデータ基盤から複数の広告媒体へ容易にデータを流せるようになります。この効率化の恩恵を最大化するためには、IT部門や外部パートナーとの早期の連携が成功の鍵となります。
4. まとめ
ECAPIは、断片化された広告エコシステムに秩序をもたらすための不可欠なインフラです。これは単なるシグナルロスの回避策に留まりません。広告主がインプレッション(広告表示)の単価ではなく、ビジネス成果に基づいて投資を判断し、AIがそれを自律的に最大化する、より透明性の高い市場を創造するための第一歩となります。2026年に向け、標準化されたデータ基盤の上に築かれた信頼と戦略的判断力を備えることが、次世代の広告ビジネスで勝ち残るための必須条件となるでしょう。
参考情報
- ECAPI (Event and Conversion API) Specification (https://iabtechlab.com/standards/ecapi/)
- IAB Tech Lab Announces Event and Conversion API (ECAPI) For Public Comment (https://iabtechlab.com/press-releases/iab-tech-lab-announces-event-and-conversion-api-ecapi-for-public-comment/)
- IAB Tech Lab Unveils Agentic Roadmap for Digital Advertising (https://iabtechlab.com/press-releases/iab-tech-lab-unveils-agentic-roadmap-for-digital-advertising/)
- Why Server-Side Tracking is Making a Comeback in the Privacy-First Era (https://martech.org/why-server-side-tracking-is-making-a-comeback-in-the-privacy-first-era/)
- The Role of Conversion API in Closing the Outcome Gap for CTV (https://www.iab.com/guidelines/the-role-of-conversion-api-in-closing-the-outcome-gap-for-ctv/)
- IAB launches Event and Conversion API to standardize advertisers’ shared data (https://martech.org/iab-launches-event-and-conversion-api-to-standardize-advertisers-shared-data/)
- Agentic AI in Marketing for 2026: Time To Get Real — and Get Ready (https://contentmarketinginstitute.com/ai-in-marketing/agentic-ai-marketing)
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