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『Acquired』優れた企業の背後にあるストーリーとその戦略に迫るポッドキャスト番組

2024.04.17

アメリカのIT業界のエンジニアや起業家に支持されているPodcast番組「Acquired」をご存知でしょうか?2015年にスタートし、現在は第6シーズンが放送中です。ダウンロード総数は200万回を超え、リスナーは4万人に到達。2019年末には、Apple Podcastのテクノロジー部門でトップ10入りを果たしました。

AmazonやNetflixなど、世の中に大きな影響を与えているIT企業やスタートアップを取り上げ、企業が成長した背景を深く掘り下げていく、今注目のPodcast番組「Acquired」の魅力に迫ります。

バーで生まれたビジネス系Podcast番組「Acquired」

番組でホストを務めるのは、デイビッド・ローゼンサル氏(David Rosenthal)と、ベン・ギルバート氏(Ben Gilbert)の2人の起業家。

ギルバート氏は、元Microsoftのプログラムマネージャーで、大学時代に作成したアプリが100万ダウンロードを獲得した逸話を持ち、ローゼンサル氏は、初期のテクノロジー企業に投資するベンチャーキャピタルMadronaなどで活躍したIT業界向け投資のプロです。

同僚だった2人は、よくバーで語り合っていました。企業設立の背景や成功の秘訣、良い組織に必要なものは何か深く話し込む中で、元々Podcastに興味のあったギルバート氏が「この話を配信してみては?」と提案。こうして「Acquired」がスタートしました。

番組では、ホスト2人のテクノロジー・投資・IT業界に精通した専門性を活かし、買収や上場のニュースをただ届けるのではなく、その背景にある成功への道のりを深掘り。実例を題材にした解説には定評があります。

回を重ねるにつれ、上場の有無にかかわらず、成功しているすべての企業には語られるべき「ストーリー」があることに気づき、現在は注目ITの企業に迫る番組として定着しました。

はじめての方におすすめのエピソード3選

番組では、AmazonやFacebook、Disney+、最近話題となったSpaceXなど、多様な業種ながら誰もが知っている有名企業の気になる「ストーリー」を取り上げています。 ここでは、PROPOマガジン厳選のエピソードを3つご紹介します。

急成長を遂げたスターバックスのIPO秘話

アメリカコーヒー文化の代名詞的存在の企業・スターバックス。1971年の創業から、1992年に上場するまでの道のりを、上場当時、投資銀行家としてスターバックスの担当をしていた、ベンチャーキャピタリストのダン・レヴィタン氏が語ります。

関係者にしか語れない、具体的な人物名や企業名、さらにはリアルな数字が踊る、密度の高いエピソードです。コーヒーショップにとどまらず、ITカンパニーと呼ばれるようになった「スタバ」の、意外な素顔を垣間見ることができます。

なぜ、Netflixはトップメディアになり得たのか

世界に1億8,000万人以上の有料会員がいる動画配信サービス企業「Netflix」(2020年3月末現在)。DVDレンタルからビジネスを始め、アメリカ大手 IT企業5社に名を連ねるまでに成長したNetflixの来歴を追いかけたエピソードです。

ストリーミングサービスへ移行するために消費行動の研究を行い、世の中に求められるオリジナルコンテンツを形にしてきた背景にある裏話とは。

語り継がれるべき企業買収10選

2020年3月、 「Aquired」は番組開始から5周年を迎え、エピソード数は100を超えました。そこでリスナーからのリクエストに答えて「これまでで一番成功した企業買収」を発表。

ホストの2人が、企業の絶対収益の算出に独自の見解を加え、厳正にランキング化しました。業界人のみならず、ビジネスマンなら押さえておきたいエピソードの一つです。動いた金額のゼロの多さにも注目です!

「学び」を追求するためにある、ブレない3つの目標

 

常に興味深いエピソードを提供している「Acquired」ですが、ホストの2人には3つの目標があります。

まずひとつめは、「自分たちが学びたいことを学ぶ」こと。 番組では当初、IT関連企業の買収の成功事例が多く取り上げられてきました。しかし、自分たちが学びたいことを追求した結果、近年は有名無名を問わず、さまざまな業種の企業の、成功した背景や戦略を深掘りする番組へと変化しました。

2つめは「番組ゲストや番組リスナーとの関係構築」です。 「Aquired」ではSNSでゲストやリスナーと直につながり、番組の外でも積極的に情報交換を行っています。番組に密に関わったリスナーは、番組に対してより深い理解と愛着が生まれるのではないでしょうか。

そして3つめは「スタートアップやITコミュニティ内で自分たちの知名度を上げる」ことです。 このミッションは達成されつつあります。「Acquired」は、 2019年にiTunes・テクノロジー部門で5つ星を獲得。NPS(ネットプロモータースコア)でも、85%の高評価です。Podcast番組評価サイト「owltail」でも、90%以上のリスナーが5つ星の評価をしており、ITコミュニティ内での信頼を、確実に勝ち得ていると言えるでしょう。

3つの目標のゴールは全て、より深い「学び」得ることです。金融業界に身を置きながらも収益化を目標としない姿勢が、達成要因の一つではないでしょうか。

番組を有料化した「Aquired」の挑戦

 

「Aquired」は、2018年から会員限定の有料コンテンツをスタートさせました。 収益化を目標としない番組が、なぜ有料コンテンツ制を導入したのでしょう。そこには、長期的に良質な番組を生み出す戦略がありました。

ラジオやTV、学校の授業など、番組や授業に自分が参加してると感じることで、内容をより深く理解できることがあります。 「Aquired」では、有料化で得た資金を利用し、遠方のゲストに直接会いに行き収録したり、リスナー参加型イベントを開催。より臨場感あふれる番組を作り、より深い「学び」を追求できるようになったのです。

また、無料コンテンツでは有名企業のエピソードが多い一方、有料コンテンツでは注目している上場前の企業も紹介。スポンサーの存在から、無料コンテンツでは流しにくい企業の失敗談なども、有料ならではのエピソードでしょう。

番組の有料化によって、より深い「学び」の追求を生み出したのです。

スポンサーに愛される、「広告とばし」をさせない工夫

「Acquired」では番組中のスポンサー広告にも「学び」が存在します。それと同時に、その「学び」はスポンサーにとっても大きなメリットになります。

通常Podcast番組内では、テレビやラジオの広告同様、番組の要所で突然CMが差し込まれます。ところが「Acquired」では、広告にスポンサー企業の社員がゲストで出演し、市場トレンドなど、リスナーのメリットになる情報を楽しく伝えるのです。 例えば、3シーズンからのスポンサー・シリコンバレー銀行の広告では、「コンシューマービジネスの創立者へアドバイスするとしたら?」や、「ゲーム業界に見るイノベーションとは?」など、リスナーからの質問に銀行の担当者が丁寧に答えています。

このように、広告も番組コンテンツの一部としてリスナーに楽しんでもらうことで、「広告飛ばし」を防いでいます。もちろん、番組とスポンサーの良い関係を保つことにもつながります。

「Acquired」がPodcastである理由

「Acquired」は、1エピソードあたり1〜2時間とかなりの長尺です。 それにも関わらず人気を保っている要因には、Podcastならではの特性が関係していると考えられます。

学習コンテンツ作成や新人研修の資料など、知識と同時に現場の雰囲気や仕事にかける情熱を伝える資料を用意したい時、Podcastは最適なツールなのです。 音声で伝わる臨場感は、テキスト情報にはないもの。また、動画配信よりも安価で出演者の心理的ハードルも低いため、比較的容易に始められます。 なにより、リスナーが作業中や移動中に「ながら聴き」できるため、長時間の内容でも苦になりません。

そして「ながら聴き」で得た「学ぶ」情熱は、リスナーのモチベーションを高め、何かを成し遂げるのインスピレーションになるでしょう。

コロナ禍の変化を生き抜く企業を紹介する「Adapting Episode」

近年、コロナウィルスの影響で世界的に経済が麻痺する中でも、「Acquired」は「学び」の追求を止めません。2020年3月には「Adapting Episode」という新シリーズをスタートしました。このシリーズは、コロナ渦で世界の常識が一変する中で、変化の最前線で奮闘する企業の取り組みを紹介するというもの。

第一弾は、シアトルの老舗高級レストラン「Canlis」。ロックダウン直前に、高級レストランからバーガースタンドやファミリー用デリバリーなどに業態を変化させることで、地域のニーズに応え、従業員の雇用を守りました。従業員一丸となった取り組みや、経営者の兄弟の、奇想天外に見えて実は考え抜かれた戦略は、閉塞感が続く今、希望を与えてくれるストーリーです。

ぜひ、Podcast番組「Acquired」で、楽しんでみてください。

関連記事:ロックダウン直前にベーグルスタンドを始めた高級レストラン『Canlis』の哲学 |

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曽志崎 寛人
PROPO.FM Producer
曽志崎寛人
歴史ポッドキャスト「ラジレキ〜ラジオ歴史小話」 ナビゲーター