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音声コンテンツも「見る」時代に?TikTokとポッドキャストの融合が示すクリエイター生存戦略

2026.01.07

smnl-tiktok-podcast-discovery 「素晴らしいコンテンツを作っているのに、リスナーが増えない」

「ポッドキャストのランキング上位にランクインできない」

多くのポッドキャスト配信者(ポッドキャスター)が、こうした「発見の壁(ディスカバリー・プロブレム)」に直面しています。音質にこだわり、構成を練り上げても、そもそも再生ボタンを押してもらえなければ、その努力は報われません。

しかし、2025年12月、この状況を打破する重要なレポートが米国で発表されました。Edison Researchによる最新調査『The Infinite Scroll』です。同レポートは、TikTokが単なるエンターテインメントアプリではなく、ポッドキャストや音楽の主要な「検索エンジン」へと進化している事実を裏付けています(出典:https://www.edisonresearch.com/the-infinite-scroll-a-tiktok-report-from-edison-research/ )

さらに、米国オーディオ業界の巨人iHeartMediaがTikTokとの戦略的提携を発表するなど、業界は急速に「ビデオファースト」へと舵を切っています。

本記事では、TikTokがポッドキャストの主要な流入経路となった背景を解説し、日本のクリエイターが今すぐ取り入れるべき「ショート動画×長尺音声」のエコシステム構築について考察します。

1. ポッドキャスターが直面する「発見の壁」とTikTokの役割

長年、ポッドキャスト業界の課題は「新規リスナーにどうやって番組を見つけてもらうか」でした。音声コンテンツはテキストや動画に比べて検索性が低く、中身を聴くまでその価値が伝わりにくいという特性があります。しかし、その構造が今大きく変わりつつあります。

1-1. 新規リスナーの半数がTikTokから流入するという現実

Edison Researchの調査によると、毎週TikTokを利用するユーザーの47%が、新しいポッドキャストを見つけるためにTikTokを利用していると回答しています。

これは衝撃的な数字です。従来、ポッドキャストの発見経路は「Apple Podcastsのランキング」や「友人からの口コミ」が主流でした。しかし現在では、多くのリスナーがTikTokのレコメンドフィード(おすすめ)を通じて、受動的に新しい番組と出会っています。

ユーザーは能動的に検索キーワードを入力するのではなく、流れてくるショート動画を見て「面白そう」「この話の続きを聴きたい」と感じ、そこから音声プラットフォームへと移動しているのです。

1-2. 13-24歳層を掴むための必須条件となった「縦型動画」

この傾向は、特に若年層(Z世代)で顕著です。同調査によると、13歳〜24歳のTikTokユーザーにおいて、ポッドキャスト発見のために同アプリを利用する割合は51%に達します。

彼らにとって情報収集の第一歩はGoogle検索ではなく、TikTokやInstagramです。テキストの羅列よりも、話者の表情や雰囲気がわかる動画の方が、コンテンツに対する信頼や親近感を抱きやすいのです。

つまり、これからのポッドキャスト配信において、音声ファイル(MP3)だけをアップロードするスタイルは、若年層という巨大なマーケットへの入り口を自ら閉ざすことに等しいと言えます音を届けるために、まず目に見える形にすることが、必須条件となりつつあるのです。

2. 大手メディアの動向:iHeartMediaとTikTokの提携が意味するもの

この変化をいち早く捉えたのが、米国の最大手オーディオ企業iHeartMediaです。彼らが2025年11月に発表したTikTokとの提携は、単なるプロモーションの枠を超えた、制作プロセスの変革を示唆しています。

2-1. 「TikTok Podcast Network」の設立背景

iHeartMediaは「TikTok Podcast Network」を立ち上げ、TikTokで人気のクリエイターをホストに迎えた新しいポッドキャスト番組の制作を開始しました。

これは、従来の「ラジオDJや有名人がポッドキャストを始める」流れとは逆の現象です。「ショート動画で人気を博したクリエイターに、長尺の音声コンテンツという『深掘り』の場を提供する」という戦略です。

TikTokのようなショート動画は拡散力に優れていますが、ファンとの深い関係構築には限界があります。一方、ポッドキャストは長時間聴取されるため、ファンエンゲージメント(結びつき)を深めるのに最適です。この両者の強みを組み合わせることで、強固なファンベースと収益基盤を構築しようとしているのです。

2-2. ビデオファースト・スタジオに見る制作フローの逆転

この提携において特に注目すべきは、ロサンゼルスやニューヨークなどに開設される共同スタジオが「ビデオファースト」で設計されている点です。

これまでのポッドキャスト収録は「音声収録が主、映像はおまけ」でした。しかし新しいスタジオでは、最初からTikTokやYouTube Shortsへの投稿を前提とした高品質な映像収録が行われます。

  1. 映像付きで収録する
  2. 面白い箇所を切り抜いてTikTokに投稿する(拡散・集客)
  3. フル尺の動画や音声をYouTubeやSpotifyで配信する(ファン化・収益化)

このように、制作フロー自体が「映像ありき」へと逆転しています。これは個人クリエイターにとっても無視できない業界標準のシフトです。

3. 「音」を「映像」で売るための具体的アプローチ

では、日本のクリエイターは具体的に何をすべきでしょうか。単に収録風景をそのまま配信するだけでは、TikTokのアルゴリズムには評価されません。「切り抜き(Clips)」には戦略が必要です。

3-1. 成功する「切り抜き(Clips)」の3つの特徴

再生回数が伸びるポッドキャストの切り抜き動画には、共通する特徴があります。

最初の3秒で結論やインパクトを提示する

「えー、次はですね」といった前置きは全てカットし、最も感情が高ぶった瞬間や、意外な事実を話している瞬間を冒頭に持ってきます。

視覚的な字幕(テロップ)を入れる

無音でも内容がわかるよう、話している言葉をポップなフォントで表示します。特に強調したい単語を大きくしたり色を変えたりする工夫が有効です。

話者のリアクションを見せる

淡々と話すだけでなく、爆笑している様子や真剣に頷く表情など、感情が伝わるシーンを選びます。

3-2. 視覚的フックが音声の再生数を押し上げるメカニズム

TikTokのアルゴリズムは、視聴完了率やエンゲージメント(いいね、コメント)を重視します。

魅力的な切り抜き動画が拡散されると、そのトピックに興味がある層(まだあなたの番組を知らない層)にリーチします。動画の最後に「全編はリンクから」「〇〇で検索」と促すことで、初めて音声プラットフォームへの遷移が生まれます。

Edison Researchのレポートにある「発見の促進」とは、まさにこのメカニズムです。視覚的なフック(興味付け)が、音声コンテンツへの架け橋となっているのです。

4. 日本のクリエイターが準備すべきこと

米国でのトレンドは、数年のタイムラグを経て日本にも定着する傾向があります。YouTubeでのポッドキャスト聴取が増えている現在、この波への備えは早すぎることはありません。

4-1. YouTubeとTikTokの使い分けと連携

まず、YouTubeチャンネルの開設は必須です。YouTubeは現在、ポッドキャストのプラットフォームとしてもSpotifyやApple Podcastsと並ぶ存在感を放っています。

  • YouTube: フル尺のビデオポッドキャストをアーカイブする場所。検索流入も期待できる。
  • TikTok / YouTube Shorts: 新規リスナーを獲得するための「認知獲得の場」

この2つを明確に使い分け、TikTokからYouTubeへ、そしてコアなファンをApple/Spotifyの音声配信へ誘導するという動線を設計しましょう。

4-2. 音声オンリーからマルチフォーマットへの移行手順

いきなり高画質な動画撮影を始めるのはハードルが高いかもしれません。まずは以下のステップで徐々に移行することをおすすめします。

  1. 静止画+波形動画:
    音声の一部を切り取り、静止画と音声波形を組み合わせた動画を作成する(Headlinerなどのツールで簡単に作成可能)
  2. スマホでの収録風景撮影:
    高価なカメラは不要です。手持ちのスマートフォンを三脚に立て、話している様子を撮影してみる。
  3. ビデオポッドキャスト対応:
    Spotify for Podcastersなどを利用し、映像付きのエピソードを配信してみる。

重要なのは、完璧な映像を作ることではなく「動いている姿」を見せることでリスナーに安心感と親近感を与えることです。

5. まとめ

Edison ResearchのレポートとiHeartMediaの動きは、ポッドキャストが「聴くもの」から「見て、発見して、聴くもの」へと進化したことを示しています。

  • 新規リスナーの約半数はTikTokなどのソーシャルメディアで番組を発見している。
  • 若年層へのリーチには、縦型動画による視覚的なアプローチが不可欠である。
  • 「切り抜き動画」を入り口とし、長尺音声へ誘導するエコシステムが勝敗を分ける。

クリエイターにとって、作業量は増えるかもしれません。しかし、それは「まだ見ぬファン」に出会うための最強の投資になります。まずは次回の収録時、スマホのカメラを回すことから始めてみてはいかがでしょうか。

参考情報

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曽志崎 寛人
PROPO.FM Producer
曽志崎寛人
歴史ポッドキャスト「ラジレキ〜ラジオ歴史小話」 ナビゲーター