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ポッドキャスト制作の時間を半減させる「AIエージェント」活用術:企画から動画編集までを自動化する次世代ワークフロー

2025.12.24

smnl-riverside-co-creator-45-prompts 「せっかくポッドキャストを始めたのに、編集作業が辛くて更新が止まってしまった……」

もしあなたがそう感じているなら、それはあなただけの責任ではありません。実は、ポッドキャストを始めたクリエイターの3人に1人は、継続できずに辞めてしまうというデータがあります。その最大の原因は、収録時間の何倍もかかる編集という重労働にあります。

しかし、2025年現在、コンテンツ制作の現場は劇的な転換点を迎えています。それは、人間がツールを操作する時代から、AIエージェントに指示を出して作業を任せる共創(Co-Creation)の時代へのシフトです。

本記事では、Riverside.fmが公開したドキュメント『ポッドキャスター向け 45 個の AI および ChatGPT プロンプト (エピソードごとに 2 時間以上節約)』(出典:Riverside.fm配布資料)をもとに、最新のAI機能を活用して制作時間を大幅に短縮し、クリエイティブな活動に専念するための次世代ワークフローを解説します。

1. なぜポッドキャスト配信は3日坊主で終わるのか

多くのクリエイターが直面する「更新停止」の壁。その背景には、音声コンテンツ特有の構造的な課題と、近年の動画化トレンドによる作業負荷の増大があります。

1-1. 多くのクリエイターを挫折させる編集の壁とデータ

ポッドキャストの制作において、最も時間を奪われるのが編集作業です。一般的に、1時間の音声を編集するには、その4倍から6倍の時間が必要だと言われています。

さらに近年は、YouTubeやTikTokなどの動画プラットフォームでの配信が必須となりつつあります。これにより、クリエイターは音声の調整だけでなく、カメラアングルの切り替え、字幕の挿入、ショート動画の作成といった、映像編集のタスクまで抱え込むことになりました。

その結果、2025年時点でのクリエイターのバーンアウト(燃え尽き症候群)率は62%にも達しており、制作プロセスの効率化は、単なる「時短」ではなく、活動を継続するための「必須条件」となっています。

1-2. 波形編集からテキスト編集、そしてチャット編集へ

この過酷な状況を打開するために、編集ツールも進化を遂げてきました。

  • 第1世代(波形編集): Audacityなどのツールを使い、音の波形を見ながら手動で「えー」「あのー」といった不要語をカットする方法。高度な技術と根気が必要でした。
  • 第2世代(テキスト編集): Descriptに代表される、文字起こしされたテキストを削除すると音声もカットされる手法。編集のハードルは下がりましたが、どの部分を削るかという判断と操作は人間が行う必要がありました。
  • 第3世代(チャット編集): そして現在、Riversideなどが提唱しているのが、AIエージェントにチャットで指示を出すだけで作業が完了するスタイルです。

これから紹介するのは、この第3世代の技術を使いこなすための具体的な方法論です。

2. 作業時間を劇的に削るAIエージェント「Co-Creator」の実力

最新のAIツールは、単なる「道具」ではなく、共に作品を作るパートナー(Co-Creator)として機能します。

2-1. 指示出しだけで完結するエージェンティック・ワークフローとは

「エージェンティック・ワークフロー」とは、人間が具体的な作業を行うのではなく、AIエージェントに対して自然言語で指示(プロンプト)を与え、複雑な工程を自律的に実行させる仕組みのことです。

例えば、従来であれば「1分30秒から45秒間を選択して削除」という操作が必要だったものが、「この録画からTikTokでバズりそうな箇所を自動で見つけ出し、字幕をつけて縦型動画として書き出して」という指示だけで完結します。

2-2. 従来型AIツールと「AIエージェント」の決定的な違い

従来のAIツールと決定的に異なるのは、AIが「文脈」を理解し、複数のタスクを連続して処理できる点です。

RiversideのAI機能などは、単に音声をテキスト化するだけでなく、以下のような高度な処理を自動で行います。

  • 自動マスタリング: ノイズを除去し、聞きやすい音量バランスに調整する。
  • 視線補正: 原稿を読んで視線がズレている映像を、カメラ目線に修正する。
  • 不要語の削除: 文脈を損なわない範囲で、「えー」「あー」などのフィラーワードのみを自然に削除する。

これにより、クリエイターは細かい調整作業から解放され、番組の中身そのものに向き合う時間を確保できるようになります。

3. 制作フェーズ別・即戦力プロンプト活用ガイド

ここからは、実際にRiverside.fmが公開したドキュメントに基づき、制作のフェーズごとに使える具体的なプロンプト(指示出し)の事例を紹介します。これらはChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)や、動画編集ツールのAI機能に対して使用します。

3-1. 企画フェーズ:AIを「戦略コンサルタント」にする壁打ち術

番組の企画段階では、AIを壁打ち相手として活用することで、独りよがりではない戦略的なテーマ設定が可能になります。

【プロンプト例:ニッチ市場の発見】

“Act as a podcast strategist…(ポッドキャスト戦略家として振る舞ってください…)”

このように役割を与えることで、AIは既存の番組と重複しない、未開拓の市場(ブルーオーシャン)を提案してくれます。また「トップ3の競合ポッドキャストを分析し、差別化ポイントを挙げて」と指示すれば、人間が数日かけて行うリサーチを数秒で完了させることができます。

【プロンプト例:鋭い質問の作成】 インタビュー番組の場合、ゲストから面白い話を引き出せるかは質問力にかかっています。

“Generate unique interview questions… Avoid banalities(ユニークな質問を作成してください…陳腐な質問は避けて)”

「陳腐な質問は避けて」という制約を加えることが重要です。これにより、AIが生成しがちな「よくある質問」を排除し、リスナーが身を乗り出すような深いテーマを掘り下げることができます。

3-2. 編集フェーズ:長尺動画からバズるショート動画を一発生成する方法

収録が終わったら、AIエージェントの本領発揮です。特に動画編集においては、AIに「任せる」勇気が時間を生み出します。

【プロンプト例:SNS用動画の作成】

“Edit into an Instagram Reel(インスタグラムのリール動画に編集して)”

Riversideなどのツールに搭載された「Magic Clips」機能を使えば、AIが笑い声や盛り上がったトピックを自動で検知し、SNSでシェアされやすい短尺動画を生成してくれます。

従来、1時間の対談動画を見返して「切り抜きポイント」を探す作業には膨大な時間がかかっていました。この工程をAIに委任することで、編集時間は劇的に短縮されます。

3-3. 拡散フェーズ:SEO記事とSNS投稿文を自動生成するCOPE戦略

COPE(Create Once, Publish Everywhere:一度作り、あらゆる場所で公開する)という戦略をご存知でしょうか。1つの音声コンテンツを、ブログ記事、SNS投稿、メルマガなどに多展開する手法です。

【プロンプト例:SEO最適化】

“Generate YouTube description with timestamps…(タイムスタンプ付きのYouTube概要欄を作成して…)”

動画の内容を要約し、検索されやすいキーワードを含んだタイトルや概要文を作成させます。特に「タイムスタンプ(目次)」の作成は、リスナーの利便性を高める一方で非常に手間のかかる作業ですが、AIなら一瞬で正確な時間を記録してくれます。

【プロンプト例:SNS投稿文の一括作成】

“Create a social media package for X, LinkedIn, and Instagram…(X、LinkedIn、Instagram用のソーシャルメディアパッケージを作成して…)”

プラットフォームごとの特性に合わせた文体で、告知文を一括生成させます。これにより、マーケティングチームを持たない個人クリエイターでも、大手メディア並みの発信頻度を維持することが可能になります。

4. 人間にしかできない「クリエイティブ」な領域に集中するために

ここまでAIによる自動化のメリットをお伝えしましたが、すべてをAIに任せれば良いわけではありません。

AIエージェントが普及し、誰もが高品質な映像や音声を制作できる制作のコモディティ化が進むと、技術的な「プロっぽさ」だけでは差別化ができなくなります。

その結果、重要になるのは以下の要素です。

  • 語り手の個性とカリスマ性
  • 企画の独自性と視点の鋭さ
  • AIにどのような指示(プロンプト)を出すかというディレクション能力

これからのクリエイターの役割は、波形を細かく切る「作業者(オペレーター)」から、AIという優秀なスタッフに指示を出し、最終的なクオリティを管理する「監督(ディレクター)」へと進化していきます。

5. まとめ

ポッドキャストや動画制作の現場は、AIエージェントの登場によって「苦行」から共創へと変わりつつあります。

今回ご紹介したRiverside.fmの「45のプロンプト」や最新機能を活用することで、これまで数時間かかっていた作業を数分に短縮できる可能性があります。それは単なる手抜きではありません。浮いた時間を、より面白い企画を考えたり、ゲストと深く対話したりするためのエネルギーに変換することこそが、本質的な目的です。

AIに依存しすぎて自分自身の「声(Voice)」を失ってはいけませんが、AIを賢く使いこなすことで、あなたの声はより遠く、より多くの人に届くようになるはずです。

まずは、最も時間がかかっている作業を一つだけ、AIエージェントに任せてみることから始めてみてはいかがでしょうか。


参考情報

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曽志崎 寛人
PROPO.FM Producer
曽志崎寛人
歴史ポッドキャスト「ラジレキ〜ラジオ歴史小話」 ナビゲーター