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広告だけに頼らない顧客接点。YouTubeポッドキャストが次世代オウンドメディアと呼ばれる理由

2025.10.15

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2025年8月、米国のテレビ視聴動向において、ある巨大プラットフォームの支配的な地位が改めて浮き彫りになりました。視聴率調査会社ニールセンが発表した月次レポート「The Gauge」によると、YouTubeが7ヶ月連続でテレビにおける総視聴時間シェアのトップを維持したのです(出典: https://www.podcastnewsdaily.com/2025/09/19/youtube-held-onto-streaming-video-lead-in-august/

この事実は、単に人気の動画サービスというだけでなく、企業が顧客と直接的かつ継続的な関係を築くための、新しい「オウンドメディア」(企業が自社で所有・運営するメディア)としての可能性を示唆しています。広告だけに依存した従来のマーケティング手法が転換期を迎える中、多くの企業がYouTube、特にポッドキャスト機能に注目し始めています。

この記事では、ニールセンの最新データを基になぜ今YouTubeポッドキャストが企業のマーケティング戦略において重要なのかを解説します。そして、ブランディングからリード獲得まで、ビジネスを加速させるための具体的な活用戦略を提案します。

1. 米国最新データが示すYouTubeの圧倒的視聴時間とビジネスチャンス

ニールセンのレポートは、現代の消費者がどこに時間を費やしているかを明確に示しており、企業がマーケティングの主戦場をどこに置くべきか、そのヒントを与えてくれます。

1-1. なぜ消費者はテレビではなくYouTubeを選ぶのか

テレビの総視聴時間に占めるYouTubeのシェアは13.1%に達し、Netflix(8.7%)やAmazon Prime Video(3.9%)といった有力なストリーミングサービスを大きく引き離しています。この背景には、消費者のメディア接触行動の根本的な変化があります。

従来のテレビ番組のような、放送時間が決まっている一方通行のコンテンツではなく、ユーザーが自らの興味関心に基づいて能動的にコンテンツを選び、好きな時間に楽しむスタイルが主流になりました。YouTubeは、この「オンデマンド視聴」のニーズに応える膨大なコンテンツライブラリを提供することで、消費者の可処分時間を獲得しているのです。

1-2. 企業がYouTubeポッドキャストに注目すべき市場背景

YouTubeの中でも特に注目すべきなのが、ポッドキャストの急成長です。もともと音声メディアであったポッドキャストは、YouTubeという映像プラットフォームと結びつくことで、新たな視聴体験を生み出しました。

最新の調査によれば、米国で毎週ポッドキャストを聴くリスナーの28%がその視聴にYouTubeを利用しており、これは他のどの音声専門プラットフォームよりも高い数字です。コネクテッドTVの普及により、リビングのテレビ画面で長尺のポッドキャストを「視聴」するスタイルが定着しつつあります。これは、企業が消費者の生活に深く入り込み、ブランドメッセージを伝えるための新たな機会が生まれていることを意味します。

2. なぜ「音声+映像」が顧客との関係性(エンゲージメント)を飛躍的に高めるのか

YouTubeポッドキャストが持つ最大の強みは、音声と映像を組み合わせることで、従来のコンテンツマーケティングでは難しかった深い顧客との関係性を実現できる点にあります。

2-1. 人柄や専門性が伝わることによる信頼関係の構築

テキストや静的な画像だけでは、企業の人柄熱意といった魅力を伝えきることは困難です。YouTubeポッドキャストであれば、専門家や社員が自らの声で語り、表情や身振り手振りを交えて解説するため、視聴者はその人柄や専門性の高さを直感的に感じ取ることができます。

この人間的な接触を通じて生まれる親近感や信頼感は、単なる製品情報だけでは築けない、企業と顧客との強固な関係性の土台となります。

2-2. コミュニティ機能を通じたロイヤル顧客の育成

YouTubeには、コメント欄やライブチャットといった、配信者と視聴者、あるいは視聴者同士が交流できる機能が備わっています。企業はこれらの機能を活用することで、自社のポッドキャストチャンネルを軸としたコミュニティを形成することが可能です。

視聴者からの質問にリアルタイムで答えたり、議論を促進したりすることで、一方的な情報発信に留まらない双方向のコミュニケーションが生まれます。こうした継続的な対話を通じて、視聴者は単なる顧客から、企業を応援し、共にブランドを育てていく「ファン」へと変化していくのです。

3. 企画から配信まで:企業がYouTubeポッドキャストを始めるための5ステップ

実際にYouTubeポッドキャストを始めるには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、企画から効果測定までを5つのステップに分けて解説します。

3-1. ステップ1:目的の明確化(ブランディング、採用、リード獲得など)

最初に、ポッドキャストを通じて何を達成したいのか、その目的を明確に定義します。例えば「企業の認知度向上やブランドイメージの構築」「専門性を示し、採用活動に繋げる」「見込み客を獲得し、商談に繋げる」など、目的によってコンテンツの方向性や評価指標(KPI)は大きく異なります。

3-2. ステップ2:ターゲット顧客に響くテーマと企画立案

目的が明確になったら、次に「誰に、何を伝えたいのか」を具体化します。ターゲットとなる顧客層の興味関心や課題を深く理解し、彼らにとって価値のある情報を提供できるテーマを設定します。一過性の話題ではなく、継続的に発信できる専門分野や独自の切り口を見つけることが重要です。

3-3. ステップ3:テレビ番組に負けないための映像・音声の品質管理

企業のオウンドメディアとして発信する以上、一定の品質は担保したいところです。視聴者がストレスなく内容に集中できるよう、クリアな音声と安定した映像は不可欠です。今日では、専用のスタジオや機材がなくても、比較的手頃な投資で品質を確保する方法は数多く存在します。

3-4. ステップ4:YouTubeのSEOを意識した配信と情報発信

YouTubeは世界第2位の検索エンジンでもあります。ターゲット顧客がどのようなキーワードで情報を探しているかを分析し、それをタイトルや概要欄、タグに盛り込むことで検索結果からの流入を増やすことができます。また、動画の文字起こし(トランスクリプト)を用意することも、検索エンジン最適化(SEO)に有効な施策の一つです。

3-5. ステップ5:効果測定と改善サイクルの回し方

動画を公開したら、それで終わりではありません。YouTubeアナリティクスを活用し、視聴回数や視聴維持率、コメントの内容などを定期的に分析します。視聴者の反応を基に、企画内容や配信スタイルを改善していくPDCAサイクルを回すことで、よりエンゲージメントの高いチャンネルへと成長させていくことができます。

4. 専門性を武器に見込み客を惹きつけるコンテンツ戦略

企業のYouTubeポッドキャストで成果を出すためには、自社の強みである「専門性」を最大限に活かしたコンテンツ企画が鍵となります。

4-1. 業界のインサイトやノウハウを提供する専門家対談

自社の専門家だけでなく、業界の第一人者やインフルエンサーをゲストに招いた対談形式のコンテンツは、視聴者に質の高い情報を提供し、チャンネルの権威性を高めるのに非常に有効です。最新の業界トレンドや、他では聞けない実践的なノウハウを提供することで、多くの見込み客を惹きつけます。

4-2. 製品開発の裏側や社員インタビューで見せる企業の素顔

製品やサービスがどのような想いやプロセスを経て生み出されているのか。その舞台裏を公開することは、視聴者の共感を呼び、ブランドへの愛着を深める効果があります。また、様々な部署で働く社員のインタビューを通じて、企業の文化や働く人々の魅力を伝えることは、採用ブランディングの観点からも非常に有効です。

5. ポッドキャストを起点としたビジネス成果への繋げ方

YouTubeポッドキャストは、単なる情報発信ツールではありません。視聴者のエンゲージメントを高め、具体的なビジネス成果へと繋げるための戦略的な導線設計が重要です。

5-1. 概要欄や動画内での効果的な行動喚起(CTA)の設置方法

動画の概要欄は、視聴者を次のアクションへと誘導するための重要なスペースです。関連資料のダウンロードリンク、セミナーの申込ページ、製品サイトへのURLなどを記載し、動画内で「詳しくは概要欄をご覧ください」と明確にアナウンスすることが効果的です。

5-2. ウェビナーや資料ダウンロードへの導線設計事例

例えば、ポッドキャストで特定のテーマについて概論を語り、より詳細な解説や具体的なソリューションに興味を持った視聴者に対して、「限定ウェビナー」や「詳細資料ダウンロード」へと誘導する設計が考えられます。これにより、質の高い見込み客(リード)の情報を自然な形で獲得し、その後の営業活動に繋げていくことが可能になります。

6. まとめ

ニールセンの最新レポートが示す通り、消費者のメディア接触の中心は、もはやテレビからYouTubeへと完全に移行しました。この巨大なプラットフォームは、企業にとって、広告に頼らずに顧客と直接的で深い関係性を築くための「次世代オウンドメディア」としての無限の可能性を秘めています。

音声と映像を組み合わせたYouTubeポッドキャストは、企業の専門性や人柄を伝え、顧客との信頼関係を構築するための強力なツールです。本記事で紹介したステップや戦略を参考に、ぜひ自社のマーケティング活動にYouTubeポッドキャストを取り入れ、顧客との新しい関係構築を始めてみてはいかがでしょうか。

参考情報

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曽志崎 寛人
PROPO.FM Producer
曽志崎寛人
歴史ポッドキャスト「ラジレキ〜ラジオ歴史小話」 ナビゲーター