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Z世代のポッドキャストリスナーは、オーディオ派とビデオ派、どちらが主流なのでしょうか?
最近、主に米国でこのテーマに関する複数の調査結果が発表され、業界で活発な議論が巻き起こっています。ポッドキャストホスティング企業Transistor社の調査では「Z世代の76%がオーディオで聴取する」という結果が示された一方、メディア調査会社コールマン・インサイツなどのレポートでは「ビデオポッドキャストを全く見ないZ世代はわずか10%」というデータも存在します。
本記事では、これらの調査結果を基に、Z世代のポッドキャスト視聴におけるオーディオとビデオの役割を深掘りします。クリエイターやマーケターが、この世代に効果的にリーチするための最適なフォーマット戦略を立てるためのヒントを解説します。
1. 76%が「オーディオ派」?Z世代の根強いオーディオ支持
1-1. Transistor調査が示すオーディオの優位性
ポッドキャストホスティング企業Transistorが米国のZ世代を対象に2025年3月に発表した調査は、オーディオコンテンツの根強い人気を明らかにしました。調査によると、Z世代リスナーの76%が「主にオーディオで聴取する」と回答。「オーディオとビデオのミックス」は18%、「主にビデオで視聴する」はわずか6%に留まりました。
特にZ世代に人気のSpotifyユーザーにおいては、この傾向はさらに顕著で、88%がオーディオのみで聴取していると回答しています。このデータは、Z世代の多くにとって、ポッドキャストの伝統的なオーディオ体験が依然として重要であることを示唆するものと言えるでしょう。
1-2. 「ながら聴き」のしやすさがオーディオの強み
オーディオが支持される大きな理由の一つに、「ながら聴き」のしやすさがあります。Redditのフォーラムでは、「オーディオ > ビデオというのは全く驚きではない。YouTubeを利用する人の多くは、見ていないタブで再生しているだけだろう」といったコメントが見られ、マルチタスクに適したオーディオの利点が支持されている様子がうかがえます。
米国の調査では、Z世代のポッドキャスト利用は通勤中よりも「自宅のモバイルデバイスで」行われることが多く(59%)、家事などをしながら聴く受動的な消費スタイルと親和性が高いと捉えることができます。
2. 一方で高まるビデオの存在感とエンゲージメント
オーディオが優勢である一方で、ビデオコンテンツがZ世代のポッドキャスト体験において重要な役割を果たしていることも事実です。
2-1. Z世代の10%しか「ビデオを全く見ない」という事実
米国のコールマン・インサイツとアンプリファイ・メディアによる「The State of Video Podcasting 2025」レポートによると、Z世代のポッドキャスト消費者のうち、「ビデオポッドキャストを全く見ない」と回答したのはわずか10%でした。
これは、Z世代がビデオコンテンツを決して避けているわけではなく、むしろ積極的に関与している層が多いことを示しています。オーディオとビデオの間に大きなクロスオーバーが存在し、多くのリスナーが両方のフォーマットを経験していることが見て取れます。
2-2. 視覚情報がコンテンツ体験を豊かにするケースとは
ビデオが好まれるのは、それがコンテンツ体験を明確に向上させる場合です。例えば、複数のホストがいる会話形式のポッドキャストでは、ホスト間のダイナミクスや表情、ジェスチャーといった視覚情報がコンテンツを豊かにします。
ある分析では、Z世代や若いミレニアル世代は、ホストの反応やセットの様子、相互作用を見ることができるフォーマットを好むと指摘されており、これがカジュアルな会話形式のビデオポッドキャストの人気を後押ししていると考えられます。
3. 文脈が鍵!Z世代はいつビデオポッドキャストを選ぶのか?
オーディオとビデオの選択は、消費する「文脈」に大きく左右されるようです。
3-1. YouTubeではビデオ視聴が優勢になる理由
プラットフォームの特性は、視聴形式の選択に大きな影響を与えます。Transistor社の調査によると、YouTubeを利用する米国のZ世代ユーザーはビデオを消費する傾向が強く、52%が「常に」または「時々」ビデオポッドキャストを視聴すると回答しています。
YouTubeは元々ビデオプラットフォームであるため、ユーザーは視覚的な体験を期待しやすく、アルゴリズムも動画コンテンツの視聴を前提に最適化されています。そのため、YouTube上では自然とビデオ視聴が優勢になるのです。
3-2. ホストの表情やリアクションが価値になるコンテンツ
アンプリファイ・メディアが行った米国のZ世代学生へのフォーカスグループ調査では、視覚情報が真に価値を加える場合にビデオが高く評価されることが示されています。
単に話している姿を映すだけでなく、ホストの表情やリアクション、ゲストとのやり取りがコンテンツの面白さに直結する場合、リスナーは積極的にビデオを選択します。視覚的要素がコンテンツの魅力を高めるかどうかが、選択の分かれ目となります。
4. 【クリエイター・マーケター必見】オーディオかビデオか?フォーマット戦略の立て方
では、クリエイターやマーケターは、この複雑な状況にどう対応すればよいのでしょうか。
4-1. オーディオファースト戦略のメリットと注意点
多くのZ世代にとってオーディオが主要な消費形態であるため、「オーディオファースト」は依然として有効な戦略です。音声だけで完結する質の高いコンテンツを提供すれば、ながら聴きをする多くのリスナーの満足度を高めることができるでしょう。
ただし、ビデオを完全に無視すると、特にYouTubeのようなプラットフォームでの「発見可能性」を損なうリスクがある点には注意が必要です。
4-2. 発見可能性を高めるためのビデオの戦略的活用法
ビデオは、リスナーが新しいポッドキャストに出会うための重要な「発見のレイヤー」として機能します。特にZ世代にとって主要な情報源であるYouTubeでは、ビデオコンテンツの方が注目を集めやすい傾向があります。
たとえリスナーが最終的にオーディオで聴取することを好むとしても、その番組を最初に見つけるきっかけはYouTube上のビデオクリップかもしれません。ビデオは、リスナーを引き込むための重要な入り口、つまり顧客が商品やサービスを認知する最初の段階(トップ・オブ・ファネル)の役割を担うのです。
4-3. プロモーション用クリップなどハイブリッドアプローチという最適解
最も成功する可能性が高いのは、オーディオとビデオの両方を活用する「ハイブリッドアプローチ」です。
具体的には、以下のような使い分けが考えられます。
- ポッドキャストアプリ向け: オーディオのみのフルエピソードを配信
- YouTube向け: フルエピソードのビデオ版や、ハイライトシーンの短いクリップを公開
- SNSプロモーション用: 興味を引くビデオクリップや予告編を投稿
このように、各プラットフォームの特性とユーザーの視聴文脈に合わせてフォーマットを使い分けることで、発見可能性とリスナーの深いエンゲージメントの両方を最大化することができます。
5. まとめ:リスナーの視聴文脈を理解し、最適なフォーマットを提供する
Z世代のポッドキャスト視聴において、「オーディオかビデオか」という問いに唯一の正解はありません。リスナーは、コンテンツの種類、その時の状況、利用するプラットフォームに応じて、両方のフォーマットを柔軟に使い分けています。
重要なのは、クリエイターが「リスナーはどのような文脈で自分のコンテンツに触れるのか」を深く理解し、それに合わせた最適なフォーマットを提供することです。オーディオの「ながら聴き」の利便性と、ビデオの「発見されやすさ」や「エンゲージメントの深さ」を戦略的に組み合わせるハイブリッドな視点が、今後のZ世代向けポッドキャスト成功の鍵となるでしょう。
参考情報
- Transistor / How does Gen Z listen to podcasts? – 2025 survey results: Z世代の76%がオーディオを好むというデータを示した、ポッドキャストホスティング企業による調査。
- Edison Research / YouTube is Gen Z’s Preferred Podcast Platform (Weekly Insights, April 2, 2025): YouTubeがZ世代のポッドキャスト利用プラットフォームとしてSpotifyを僅差で上回っていることを示した、米国のメディア調査会社によるデータ。
- Coleman Insights & Amplifi Media / The State of Video Podcasting 2025: Z世代のビデオポッドキャストへの関与の高さを示した調査レポート。
- Amplifi Media / Gen Z’s Revealing Critique of Spotify’s Video Push: Z世代がどのような場合にビデオを評価するのかについての洞察を提供した、フォーカスグループ調査。
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