
目次
最近、音楽ストリーミングサービス大手のSpotifyが、アメリカのユーザー向けにアプリの大型アップデートを実施しました。これにより、これまで分かりにくかった料金表示が明確になり、オーディオブックの購入方法も大幅に改善されたと報じられています。特に、オーディオブックの個別購入や、プレミアムプランに含まれる月15時間の聴取時間を超えた場合に追加購入できる「Top-up」が可能になった点は注目すべき変更点です。
この記事では、これらの変更が米国のSpotifyユーザーにどのようなメリットをもたらすのか、そして日本の私たちは今後どのような便利な機能を期待できるのかを、背景にあるAppleとの関係性も踏まえながら詳しく解説していきます。
※2025年6月4日現在、Top-upはSpotifyの米国ユーザーのみが対象で、日本ユーザーは利用できません。
はじめに:何が変わった?SpotifyとAppleの最新動向
今回のSpotifyの動きは、単なるアプリの機能改善に留まりません。実は、人気ゲーム「フォートナイト」の開発元であるEpic GamesとAppleの間で争われた裁判の判決が、大きな引き金となっています。
Appleは、App Store以外の決済方法をユーザーに知らせることを禁じる規約(アンチステアリング条項)をアプリ開発者に課していましたが、Epic Gamesが訴訟を起こした結果、2021年に違法と認定されました。
しかし、その後のAppleの対応が不十分なものだったため、2025年4月、米連邦地裁はAppleが同差止命令に「意図的に違反」したと認定。開発者の顧客連絡や外部リンク購入への手数料を禁じる規約変更を即時命令しました。
これを受け、Spotifyはアプリを迅速に更新し新機能を提供。判決を予期していたと見られます。
この一連の出来事は、アプリ開発者とプラットフォームの関係性、そして私たちユーザーのコンテンツ利用方法にも影響を与える可能性のある、重要な動きと言えるでしょう。
米国版Spotifyアプリの進化ポイント
今回のアップデートで、米国のSpotifyユーザーは、特にオーディオブックと料金体系において、より便利で透明性の高い体験を享受できるようになりました。
オーディオブックがもっと手軽に!1冊からの購入や聴取時間の追加購入が可能に
これまで、AppleのApp Storeポリシーによる制限のため、Spotifyアプリ内でオーディオブックを個別に購入することは困難でした。しかし、今回の変更で、米国のユーザーはSpotifyアプリ内で直接、1冊からオーディオブックを購入できるようになりました。気になる作品を気軽に試せるのは嬉しいポイントですね。
さらに注目すべきは、「Top-up」機能の導入です。Spotifyのプレミアムプランには、毎月15時間分のオーディオブック聴取時間が含まれていますが、この時間を超えてさらに聴きたい場合、追加の聴取時間を購入できるようになったのです。これにより、ユーザーは自身のペースで柔軟にオーディオブックを楽しめるようになります。
「これいくら?」がすぐ分かる!アプリ内での料金表示と直接購入リンク
長らくユーザーを悩ませてきた料金の不透明さも解消されます。アップデート後の米国版アプリでは、サブスクリプションプランの料金、オーディオブックの個別価格、さらにはお得なプロモーション情報などが明確に表示されるようになりました。
加えて、ユーザーはアプリ内で購入したいサブスクリプションやオーディオブックへの直接リンクをクリックし、手続きを進めることが可能になりました。従来のように外部サイトへ誘導されたり、複雑な手順を踏まされたりすることなく、スムーズな購入体験が実現します。
Spotify自身も、これらの改善は「自明でユーザーフレンドリー(obvious and user-friendly)」なものであり、これまで提供できなかったことが「馬鹿げている(absurd)」とコメントしています。
サブスクプランの変更もアプリ内でスムーズに
利便性はサブスクリプション管理にも及びます。個人プランからファミリープラン、学生プラン、Duoプランなど、各種プレミアムプランへの変更手続きも、アプリ内でより簡単に行えるようになりました。これにより、ユーザーは自身のライフスタイルや利用状況に合わせて、最適なプランを手軽に選択・変更できます。
支払い方法の選択肢が増える可能性も
Spotifyは、ユーザーがAppleの決済システム以外の支払い方法も利用可能であり、自社ウェブサイトではより幅広い選択肢を提供していると言及しています。今回の判決は、将来的にはアプリ内でより多様な決済手段を直接統合する道を開く可能性があり、Appleの決済処理への依存度を低減させることに繋がるかもしれません。
【表】Spotify米国アプリ: オーディオブックと料金表示の変更点早わかり
機能分野 | アップデート前(Appleの制約下) | アップデート後(判決後) |
オーディオブック購入 | アプリ内での個別購入は困難または不可、外部誘導も制限 | アプリ内で個別購入可能、「Top-up」時間購入も可能 |
料金表示 | 多くの商品で直接的な価格表示なし、不透明 | アプリ内で明確な料金情報を表示 |
購入プロセス | アプリ外部へのリダイレクト、またはAppleのアプリ内課金のみ | 直接購入リンク、より多くの支払いオプションへの道が開かれる |
サブスク管理 | 多くの場合ウェブサイトでの変更が必要 | アプリ内でプレミアムプランの変更がより容易に |
ユーザーにとっての嬉しいメリットとは?
今回のSpotifyアプリの変更は、米国のユーザーにとって多くの具体的なメリットをもたらします。
- オーディオブック購入が容易になり、料金も明確化
- 透明性向上で価格が明確になり、選択肢が拡大
- 個別購入や聴取時間の追加購入でコンテンツアクセスが容易に
- 手数料負担軽減で低価格提供の可能性
- よりユーザーフレンドリーなアプリ体験に貢献
これらのメリットの中でも、「透明性と選択肢」の向上は特に重要です。価格や購入オプションが明確になることで、私たちはより情報に基づいた意思決定が可能となり、結果として市場における健全な競争を促す可能性があります。
好きな作家やクリエイターを応援しやすく!
今回の変更は、私たちユーザーだけでなく、コンテンツを生み出す作家やクリエイターにとっても朗報となる可能性があります。
これまで、AppleのApp Storeでは、デジタルコンテンツの売上に対して最大30%の手数料(通称「Apple税」)が徴収されてきました。もし、Spotifyがオーディオブックの直接販売において、この「Apple税」を軽減または免除できるようになれば、その分をクリエイターへの印税率向上や、さらなるコンテンツ投資に充てることが期待できます。そうなれば、私たちが支払うお金が、より直接的に好きな作家やクリエイターに届くようになるかもしれません。
Spotifyは「これはクリエイターに直接利益をもたらす他のシームレスな購入機会への扉を開く」とコメントしており、オーディオブック市場全体の活性化にも繋がる可能性があります。
もちろん、クリエイターへの実際の利益配分は、今後のSpotifyの印税構造次第ではありますが、より良い条件を提供する機会が生まれたことは間違いありません。
今後の展望:日本のSpotifyではどうなる?期待される変化
さて、気になるのは「これらの変更は日本にもやってくるの?」という点でしょう。
米国での司法判断は、世界的なアプリストア規制強化の大きな流れの一部と捉えることができます。例えば、EUでは既にデジタル市場法(DMA)が施行され、Appleのような巨大プラットフォームに対して同様の義務を課しています。
そして日本でも、アプリストア運営事業者に対する規制の動きが具体化しています。2024年6月には「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」(通称:スマホソフト競争促進法)が成立しました。この法律は、スマートフォンのOSやアプリストアの寡占状態を問題視し、公正な競争環境を整備することでイノベーションを促進することを目的としています。具体的には、第三者によるアプリストアの提供許可や、代替決済システムの利用妨害の禁止などが盛り込まれており、2025年後半からの本格的な運用開始が見込まれています。報道によれば、2025年12月18日からの施行が予定されています。
日本の法規制も、高額な手数料や外部決済システムの利用制限といった、米国やEUで問題視されている点と同様の課題認識に基づいています。
これらの状況を踏まえると、将来的には日本国内のSpotifyアプリにおいても、米国と同様の変更(料金表示の明確化、オーディオブックの直接購入オプションの導入など)が実施される可能性は非常に高いと考えられます。
問題はタイミングです。Spotifyが米国のモデルを基に自主的に日本でも変更を先行して実施するのか、あるいは日本の新法が完全に施行されるのを待つのか、注目されます。いずれにせよ、日本のユーザーは、米国の状況を、将来享受できるかもしれない利便性向上の「予告編」として捉えることができるでしょう。
まとめ:もっと自由にオーディオコンテンツを楽しめる未来へ
米国におけるSpotifyアプリの大型アップデートは、単なる新機能の追加以上の大きな意義を持っています。これは、長年にわたるAppleとの対立や法廷闘争、そして世界的な規制の潮流がもたらした、デジタル市場における重要な転換点と言えるでしょう。
今回の変更は、私たちユーザーにとってはより高い透明性、幅広い選択肢、そして向上した利便性をもたらし、クリエイターにとってはより良い収益機会と公正な条件への道を開く、双方にとって明るい兆しです。
米国での進展は、日本を含む世界各国の規制動向と相まって、デジタルコンテンツプラットフォームがよりオープンで競争的、そして最終的にはオーディオコンテンツを楽しみ創造する全ての人々にとってより有益なものになる未来を示唆しています。Spotifyが掲げる「Time To Play Fair(公正な競争の時)」 というスローガンが、徐々に現実のものとなりつつあるのかもしれませんね。
今後の日本での展開にも大いに期待しましょう!
Download 番組事例集・会社案内資料
ぴったりなプランがイメージできない場合も
お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。
マイク選び・編集・台本づくり・集客など、ポッドキャスト作りの悩み・手間や難しさを誰よりも多く経験してきました。そんな私が皆様のご相談をメールやオンラインMTGで丁寧にお受けいたします!